(発達低気圧と異常潮位の続き)
気象庁のHPを見ると、潮位のサイトがある。主要な港湾の潮位(海水面の高さ)の様子がわかる。近くでは福島県小名浜港、千葉県銚子港の潮位が参考になる。6,7日の両港の潮位を確認すると、天文潮位(理論上の潮位)と実際の潮位の差が両者とも1mもある。そしてそれぞれの港のこれまでの観測最大値よりも50cmも高いのである。
http://www.jma.go.jp/jp/choi/graph.html?areaCode=206&pointCode=CS瀬上川は○○港に注いでいる。そして○○港は両港の中間にある。データから推測すれば、瀬上川でも過去の最大水位より50cmも高いのである。50cmも高ければ、氾濫するのは当然である。
しかしそんなことで納得している場合ではない。7日早朝の満潮時はひどかったが、午後の満潮時も相当の被害が予想される。急ぎ対策を採らなければならない。河川管理者の県の担当者と相談し、河川護岸の上に土のうを積むことにした。急ぎ土木業者を手配し、護岸手すりの後ろに土のうを配備した。
昼前には配備が終わり、一息つけた。午後の満潮は3時過ぎである。昼食をとりながら様子を伺っていると徐々に水位が高くなってきた。そして早くも午後1時過ぎには護岸からあふれだした。
河口近くの川は、潮位だけでなく、海の波浪の影響もうける。海岸の波が川を上ってくるのである。そうしているうちに大きな波が押し寄せ、何とせっかく積んだ土のうの大半が流されてしまった。これでは何の役にも立たない。
そのままにはしておけないので、積み直すことにした。手配した土木業者が帰ってしまったので、自分達職員で行わなければならない。今度は流されないよう手すりの柱に紐で縛りつけた。(これは効果があった)。押し寄せる波の中での作業なので重労働だったが、何とか満潮時の前には作業を終えた。
土のうによる護岸のかさ上げはそれなりに効果を発揮した。土のうの上や隙間から水がこぼれてしまうが、こぼれ方が少なくなった。それだけ宅地に入るみずの量が少なくなったようである。早朝の氾濫時には6軒の床上浸水があったが、かさ上げを行った午後はいずれも床下浸水でとどまったのである。
氾濫騒ぎが広まり、たくさんの見物人が見に来ている。ギャラリーは勝手なものだ。「土のう設置だけでは不十分だ」「市の対応は後手に回っている」「なぜ自衛隊の応援要請を行わないのか」等々・・・・。散々苦情を言われた。(被災者はむしろ淡々としている。)
しかし振り返ってみれば、言い分はもっともである。もともと抜本的な対策が講じられていいれば、被害は防げたのである。なぜ抜本的対策が出来なかったかといえば、コストの問題である。川を締め切り大型ポンプ場を作り、高潮の時には強制的に水を海に流してやれば、問題は解決する。しかしそのための費用は数十億円である。被災家屋31件。仮に31億円費用がかかるとすれば一軒あたり1億円である。これは現実的な話ではない。
自然現象をコントロールするのは大変である。コストや環境への悪影響を考えれば社会的には不可能といったほうが良いだろう。自然現象とはうまく折り合いをつけなければならない。
もっとも災害対策は、社会的な限界だけではない。肉体的限界もある。ろくに睡眠もとらずに3日間働きずくめだった。疲れた・・・。
写真上:土のうかさ上げ(横から)
写真中:土のうかさ上げ(上から)なんとか水の流出が抑えられている。
写真下:高波により水が流出してしまった。
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