Tuesday, July 07, 2009

万葉のこころを描く

(ひと月ほど前の話になるが)県立五浦天心美術館に企画展「万葉のこころを描く」を見に行った。


奈良県立万葉文化館所蔵の万葉歌をテーマに描かれた日本画50点の展示である。


現代画家がそれぞれ万葉の一首を選び、和歌を画題にして各人の心象風景を描いているのである。
和歌と日本画のコラボレーションである。
新たな絵の楽しみ、思わぬ「歌」の感動が絵画とともに伝播してくるのである。


印象に残った歌絵(?)をいくつか。















上 「あをによし 奈良の都は 咲く花の にほふがごとく 今盛りなり」 
詠み人:小野老  


改めて説明するまでもないでしょう。作者(坪内滄明)の言葉を借りれば、桜の時期、春日山の中腹から奈良の市街を見渡して、(目を閉じれば)いにしえの都の姿が見えてきたとか。
(絵画名:奈良  春霞)




左 「われはもや 安見児(やすみこ)得たり 皆人の 得難(えかて)にすといふ 安見児得たり」 

詠み人:藤原鎌足 


現代語訳:私は安見児を得た、皆が得がたいと言っている安見児を得た。


藤原鎌足が天智天皇から(天皇の所有物である)采女(うねめ)を賜ったときの喜びを詠ったものです。
(作者 関口正男 絵画名 安見児)

地方の豪族から(従属の象徴として)天皇に献上された容姿端麗な女性の(凛とした)美しさが際立っています。







左2 「君待つと わが恋ひをれば わが屋戸の すだれ動かし 秋の風吹く」
詠み人:額田王 


現代語訳:あなたを待って恋しく思っていると、私の家の簾を動かして秋の風が吹く。 
 

風は来訪の予兆とされる。恋の思いが秋風を呼び起こした。招婿婚の時代、久しく訪れてくれない夫(天智天皇)を想って詠んだ歌である。
(作者 平山郁夫 絵画名 額田王)

下二つは、恋歌である。万葉の恋歌は、因習に束縛されないのびやかさがある。絵にも黎明期の輝きが感じられるのです

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