Wednesday, July 25, 2007

ただ立ち尽くすのみ

人間の感覚には、懐かしさのあまりぼう然とすることがある。
映画やドラマで、過去にタイムスリップした主人公が、その瞬間、茫然自失になるシーンがそれだ。

ちょうどそんな感覚だった・・・・・・。
「府中市郷土の森」の中にある「府中尋常高等小学校」の移築建物は、現在博物館(詩人村野四郎記念館および教育資料館)として使われている。
http://www.fuchu-cpf.or.jp/museum/sisetsu/fukugen.html
この建物は、昭和10年に建設され、児童数が増えて手狭になる同54年まで使われていた。

元の小学校だから、教育資料の展示室にはうってつけである。

この資料館には、昔の教室をそのまま保存してある。
教室に入った瞬間、立ち尽くしてしまった。

改めて良く見てみると、机も椅子も、全ての部材がむく材(樫?)で手作りなのである。今の様な合板ではないのだ。

そして、机は二人用だし、収納方法も天板が開くものとそうでないものの二通りがある。

確かに40数年前は、こんな机で、小さな椅子に座り、授業を受けていた。
前の児童がつけただろう落書きや傷が、次の子供たちに引き継がれていく。

だるまストーブも置いてある。コークスを燃やしていた。教壇も教卓も昔のままだ(当然だ)。

誰もいない教室なのに、目を閉じれば、黒板の前には、懐かしい恩師が立ち、机に向かう幼馴染たちが当時の姿でよみがえる。

教室は単に器に過ぎないのかも知れない。しかし、本物の材料で作った机や椅子、自分たちでコークスを運び、暖をとったストーブが教えてくれたものは、かけがえのない思い出となっている。

そして、つい考えてしまう。物にあふれた時代、今の子供たちが40年後、学んだ教室と再会した時、果たして同じ感慨をもてるだろうか。

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Wednesday, July 18, 2007

崩れた!!


台風4号の影響で市の北部では200mmを越す雨量があった。九州や四国と比べればさほどではないが、日立市では、年間降雨量の1/6にあたる大雨である。

市内約70箇所で被害が出た。そのほとんどが、小規模ながけ崩れや河川氾濫であり、人命や家屋に被害が及ぶことはなかった。

台風の通過した15日(日)は、夜遅くまで被害対応に追われ、翌16日(月)の早朝から、市内のパトロールに出かけた。そして、(偶然に)この16日午前10時15分に新潟で中越沖地震が発生した。

早朝のパトロールの時には何ともなかった公園で崖崩れが発生していると、午後になって通報が入った。                                                                                    
この公園は海岸に面した崖の上にある。そして先日のブログの「海岸はワンダーランド」で記した「海食洞」がある場所であった。http://tosiseibi.blogspot.com/2007/06/blog-post_16.html

その幾つかある「海食洞」の一つが崩れたのである。前日の降雨で地盤が緩んだところに地震の揺れ(震度3なのだが)が加わり、崩落したのだろう。

幸い崩れた場所は、公園のごく一部で、利用者が巻き込まれることはなかった。                                                                  
とは言え、先日、心配したばかりのことが起きたのである。
虫が知らせたのだろうか。

さっそく崩れた周辺を立ち入り禁止にして、応急処置をした。海岸線の崖は、大分侵食されている。これからも今回のような条件がそろえば、被害が予想されるのだ。

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Saturday, July 14, 2007

豊かな道

府中市郷土の森博物館へ行くのに府中駅から下河原緑道を歩いていった。

下河原緑道は、昭和51年まで運行されていた国鉄下河原線の廃線跡地を歩行者と自転車の専用道路として整備したものである。

歩行者と自転車だけの道路だから自動車(の危険)を気にしないで歩けるので気分は至って快適である。 
                                                   
時代の移ろいと共に不要になるものは多い。国鉄下河原線は、かつては国分寺~東京競馬場間の輸送を担っていたが、(並行する)武蔵野線が開通したことで役割を終え、廃線となった。

不要になった施設を再活用して時代を開く。新しいものを作るだけが都市計画ではない。まちづくりの真骨頂は、古いものを未来につなぐことにあるのです。
廃線跡を仕立て直した下河原緑道の沿線には、本来の暮らしを支える数々の機能が付随していた。

ポケットパーク:歩行者の休息の場所や、近所のたまりの場所となっている。
トイレ:歩行者(特に高齢者)にとってこれはありがたい。 
生産緑地地区:20年間以上農地として残すことを条件に、持ち主に宅地並み課税を免除する制度である。これは単に税金対策だけではない。農地が残ることで、市街地に緑が確保できるのである。
市民農業大学:生涯学習の一つとして、農業体験(ここではそばづくり)を市民が体験できる。
農産物即売所:新鮮な野菜が安く手に入る。生産者、消費者、両方にメリットの多い地産地消施設なのです。
                                                                                                                                   
                                                                                                                  
                                                                                  
                                                      
                                                                 
                                                           
                                                                            
                                                 
                                                       
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成熟社会におけるインフラとは、この下河原緑道のような公共施設を言うのでしょう。

さて、下河原線と同じよう廃線となった日立電鉄線の跡地はどうなるのでしょうか。
廃線を決める際の廃止容認派と存続派の対立は、(どちらに原因があったにせよ)お世辞にも民主主義と言える代物ではありませんでした。

日立市が成熟した市民社会になるためには、存続か廃線といった二元論ではなく、どうすれば次の時代につながる活用ができるかという第3の道の議論が必要ではないかと思うのです。

廃線から2年が経っても、何の議論も始まりません。それだけ対立の根が深かったということでしょう。対立のエネルギーを協調と創造の力に変えることができれば、未来が見えてくるはずなのですが・・・。

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Sunday, July 08, 2007

あるく・みる・きく・考える!

宮本常一生誕百年を記念して、各地で様々な催しが行われている。 http://www.d3.dion.ne.jp/~shouji/sub147.htm

晩年の20年間を過ごした府中市では、「宮本常一の足跡・旅する民俗学者の遺産」と題した展覧会が7月1日まで開催されていた。
http://www.fuchu-cpf.or.jp/museum/event/event.html
なかなか出かける機会がなかったが、思い立って閉会直前に行ってきた。

「歩いた距離16万Km・地球4周分」「写した写真10万枚」
この展覧会のキャッチコピーである。

宮本は、「旅する民俗学者」とよばれた。
各地の古老から人生経験を聞き取り、生活の小事から古い民俗を浮き彫りにする独自の民俗学を開拓した。
柳田国男を師としながらも、研究方法が正統派ではないことから 学界の評価は決して高くはなかった。

展示では、宮本の著作や自筆の原稿が展示されていたが、その中でもひときわ目を引いたのは、膨大な写真(の一部)である。


戦後の経済成長の前の何の変哲もない農漁村の様子をひたすら写真に収めた。
そして、その風景から宮本は、そこに暮らす人々の意思を読み取り記録に残した。


「人は自分の持っているものしか旅から持ち帰れない」
自らの足裏で社会と暮らしを読み取る。簡単なようだが、その能力をもった人間が何人いようか。

宮本の卓越した「読む力」が、いにしえの日本人の心を明らかにした。
その「読む力」の源は、宮本の言うところの「あるく」「みる」「きく」「考える」・・・徹底した現場主義なのである。

インターネットで簡単に情報が手に入る現代、果たして我々に宮本のような「事実から読みとる力」が残されているだろうか。

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Sunday, July 01, 2007

ウィークエンドファーム7月

蒸し暑くなると草取りが忙しい。高温多湿になると作物の生育も著しいのだ。

今日は、ジャガイモ掘りをした。例年なら7月下旬に行うのだが、暖冬で早く播種したため成長が早く、梅雨の晴れ間に掘り起こした。

出来は例年並か。中に巨大な「男爵」も出現した。この場所は肥料が良かったのだろう。

菜園は、完全無農薬、有機栽培である。秋に近くの公園の落ち葉を集めてきて、堆肥をつくる。そして翌年畑にすきこむ。

掘っていたら、畑の住人がいろいろ登場してきた。ミミズ、団子虫、トカゲ・・・。畑を始めて以来、年々増え続けている。堆肥が効いてきて、地味が良くなっているのが判る。

今年は、スイカが期待できそうだ。これまで(土が悪いためか)うまく出来たためしがなかった。(最初の年、化成肥料を使った時はよく出来たのだが)

無農薬、有機農業といっても大それたことではない。単に農薬、化成肥料を使わないだけなのだ。代わりの堆肥も公園掃除の副産物である。いろいろな意味で自然体農業をやっている。

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