Wednesday, June 27, 2007

モンパルナスのキキ







まさか本物に出会えるとは思っても見なかった。
プティ・パレ美術館所蔵の「赤いセーターと青いスカーフのモンパルナスのキキ」。
茨城県近代美術館のキスリング展で7月20日まで公開されている。http://www.modernart.museum.ibk.ed.jp/exhibition/kikaku/index.html

キキ(本名アリス・プラン、「キキ」という名はギリシア語でアリスの愛称)は、「モンパルナスの女王」とよばれ、キスリングをはじめ藤田嗣治、モディリアーニ、ユトリロ、写真家アン・レイなど数多くの芸術家のモデルとなった。

キキは、私生児として生まれ、極貧の中で少女時代を送った。
パリに出た後、モンパルナスの芸術家たちに偶然見出された。男性遍歴、麻薬中毒、・・・その奔放な性格は芸術家たちの心を虜にした。

キスリングは100点を越す「キキ」を描いた。
その中でも秀逸なのが「赤い・・・・スカーフのキキ」。
キスリングは、(他のモデル同様)キキに恋した。キキとの場合、その描いた点数からいって「恋」といった生やさしいものではなかったろう。

写真で見ると、描かれた時代のキキは、絵画のそれより成熟した女性である。
キスリングは実物より若く、清楚にキキを描いた。それは画家の心眼である。奔放な中にも純真で一途な面を見出したのだろう。

キキは、決して飛びぬけた美人ではないが、芸術家を魅了してやまない魅力があったという。それは私生児という出自と貧困の中で身についた術なのかもしれない。

キキは52歳で孤独の内に没した。麻薬と過度の飲酒の結果である。
キスリングの「キキ」は、大きく眼を見開き、その瞳ははるかかなたを見つめている。決して現世では本物の幸せが見出せないことを知っていたかのように。

写真上:赤いセーターと青いスカーフのモンパルナスのキキ(キスリング)
写真中:キキの半身像(キスリング)
写真下:愛人アン・レイの撮ったキキ

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