安藤忠雄の本歌取り
本歌取りとは、すぐれた古歌や詩の語句、発想、趣向などを意識的に取り入れる表現技巧のこと。
新古今集の時代に最も隆盛した。
転じて、現代でも絵画や音楽などの芸術作品で、オリジナル作品へのリスペクトから、意識的にそのモチーフを取り入れたものをこう呼ぶ。
オリジナルの存在と、それに対する敬意をあきらかにし、その上で独自の趣向をこらしている点が、単なるコピー(パクリ)とは異なる。
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淡路島にある安藤忠雄設計の「淡路夢舞台」を見に行った。
夢舞台は、関西国際空港を作る時に埋め立て用の土砂を採取した場所にある。
土を取った跡地に自然の復元をかねて公園やホテル、野外劇場、国際会議場を整備したのである。http://www.yumebutai.co.jp/
その設計を一手に行ったのが建築家、安藤忠雄なのです。
安藤ファンとしては一度は訪れたい聖地のようなもの。
なぜならば、たくさんの安藤建築が見られるだけではない。安藤は、ここで本業以外の造園やランドスケープも手がけているのです。
関東に住んでいる身ゆえ、なかなか淡路島まで出かける機会もなかったのだが、大阪に出かけたついでに足を伸ばしてみることにした。
書きたいことはたくさんあるのだが、今回は上記の「本歌取り」のこと。
世界的建築家、安藤が「本歌取り」とは?、と思われるかもしれないが、夢舞台のなかの噴水(貝の浜)、植物園、陸回廊(スペイン風庭園)は、世界各地の名庭園をオリジナルにして、安藤の独創性を重ねた作品になっているのです。
夢舞台の展示スペースに安藤建築とその「オリジナル」の写真が並べて飾ってありました。
「本歌取り」はまちがいのないこと。いや、それをあえて知らせることで安藤建築の奥の深さを教えているのかもしれない。
噴水(貝の浜)は、ローマの郊外チボリにあるビラ・デステ
http://www.ne.jp/asahi/buon/viaggio/italia/tiv1.html
植物園は、ロンドンの郊外にある王立キューガーデンhttp://www.h2.dion.ne.jp/~blume/main/oversea/eng/kew-g.htm
陸回廊(スペイン風庭園)は、かのアルハンブラ宮殿
http://www.arch-hiroshima.net/a-map/spain/alhambra.html
が「本歌」なのです。
それぞれに共通しているのは、安藤独特の空間の切り取り方。
余計なものを剥ぎ取り、対象の本質に迫ろうとする大胆さなのです。
3つの作品のなかでも、最も感動したのは陸回廊(スペイン風庭園)。
アルハンブラ宮殿には行ったことはないが、乾いた空気と南欧独自の光線が作り出す陰影は写真で見ていても憧憬である。そこに湧く噴水と流れ出るせせらぎは、きっと見る音楽なのだろう。
安藤の作品には地中海性気候が合うのかもしれない。
安藤が心の師としたル・コルビジエも晩年を南仏カップ・マルタンで過ごした。
淡路島も温暖・乾燥の瀬戸内海気候である。
シンメトリックな構成にリズミカルな列柱、流水とわずかばかりの草花が、無機質な空間の中で命の輝きを放っている。
Labels: アート
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