壁面は背表紙
司馬遼太郎記念館のハイライトは高さ10mはあろうかという書架である。
建築家、安藤忠雄は記念館の設計にあたって司馬の博学強記を表すため、壁面を本で埋めた。
それも地下階から地上2階までつながる吹き抜けの壁一面をである。
司馬の著作の源泉は膨大な資料調べにある。
丹念に文書にあたり、その時代、その場面にいるがごとく史実を体得して書くのである。
その行為が司馬文学の魅力になっている。
司馬は、自宅に蔵書を6万冊持っていた。
(10万冊あれば公共図書館ができるというのですから個人の蔵書数としてはとてつもない数です。)
そして記念館に置かれた蔵書は2万冊。
それも、自宅から移したのではなく、改めて同じ本を購入して備え付けた。
安藤の司馬への敬意と謙虚さの現われなのでしょう。
背表紙しか見えないし、実際には手にとって読むことの出来ない本なのです。
(とび職人が本を並べたというから、物理的に本を取り出せない構造となっている。)
しかし、建築家の目には司馬遼太郎の世界を感じ取ってもらうには、この方法が最良だったのです。
膨大な知識の集積と類まれな想像力があって初めて司馬文学が生まれた。
そしてその象徴がこの背表紙の壁面なのである。
(写真は記念館のHPの転載)
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