マルクスにもアートを
ハイリゲンシュタット(ウィーン)というとベートーベンの「遺書の家」が有名だが、地下鉄ハイリゲンシュタット駅の近くには延長(なんと!)1Kmにもなる巨大な集合住宅がある。
その名もカール・マルクス・ホフ。
ホフ(hof)、独語で「館」のことだからこの建物はかの「マルクス」の館ということになる。
といってもマルクスが住んでいたわけではない。
第1次世界大戦後、ハプスブルク帝国は消滅し、オーストリアは共和国となった。
その時選挙で選ばれたのが社会民主党。「赤いウィーン」と呼ばれた社会主義政権であった。
この政権下でつくられたのが、この集合住宅。
ゆえに共産主義の教祖(?)マルクスの名前を冠したのである。
とてつもなくデカイ。
戸数約1400、4000人が暮らす。幼稚園から病院、理容所まであり、集合住宅というよりは小規模の都市なのである。
建設されたいきさつは、第1次大戦が終わり、復員してきた兵士で人口が急増したので、大量に入居できる巨大集合住宅を作ったのである。
とはいっても、芸術の都、ウィーン。日本の公団住宅ような野暮な建物は作らなかった。
完成したのは1927年。19世紀末のウィーンセセッシオン(分離派運動)を経て、20世紀初頭に始まった装飾を排した機能主義建築の時代である。
社会主義政権下らしい機能中心の建築様式ではあるが、時代を反映したデザイン(表現主義)がそこかしこに見られ、80年を経た今でも存在感のある建物である。(取り壊されてしまった同潤会アパートもそうだった。)
よく見ると、ゲートアーチの上には彫刻が置かれていたり、その上の最上階の壁にはシンボリックな塔が付けられていたり・・・。確かにモダン主義なのだ。
「マルクスにもアートを」。「思想にこそ芸術を!!」。・・・・そう考えて見ればなかなかユニークな建物なのである。
Labels: ウィーンの旅97
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