都市の陰影
出張で仙台に行ってきた。
区画整理組合の役員たちを連れての視察だ。視察先は仙台駅東第二土地区画整理事業。
昭和63年に始まり今でも継続中の事業である。区域面積45ha、事業費約700億円という巨大プロジェクトである。
仙台市は、戦災復興事業で街づくりを進めてきた。駅の西側が街の中心で青葉通りや定禅寺通り、一番町などが賑わいの中心となっている。
一方、駅の東側は戦災を受けなかったので、江戸藩政期の町割のまま、道路も狭い木造密集地が残ってしまった。火災の危険性や交通渋滞の問題を解決するため、仙台市はこのプロジェクトに取り組んだという。
学生時代暮らした町なのでこの地区にも思い出がある。かつては個人商店や一杯飲み屋の連なる下町であった。当時既に人口60万人の大都市だったが、駅裏の人間味ある町並みは、一人暮らしの侘しさを慰めてくれた。(写真は昭和30年代?仙台町並み変遷のサイトから)
この事業には賛否、相当の議論があったという(現在でも続いている)。立ち退かざるを得ない住民はもちろん、古くからの町並みを失うことへの危機感をもつ多くの市民が反対した。
この事業のコンセプトは『「21世紀都市・仙台」を支える高次な都市機能の集積』だという。整備が始まって20年経つ。しかし実態はコンセプトとは異なり、高層マンションが立ち並ぶ無機質な街になってしまった。高次な都市機能とは(役所がよく使う美辞麗句だが)先端企業や国の行政機関、文化施設のことである。そのようなものはどこにも見当たらない。立地したのは「手っ取り早く金になる」マンションである。それも個々の地主やマンション業者の都合で建てられた無計画な建築ばかりである。
都市は人の暮らしの入れ物である。人の生活は多様で奥行きがある。その営みには優劣や善悪や美醜を包み込む舞台が必要である。日本の都市計画の多くは、地域の経済発展とともに進められてきた。経済合理性の前には人生で培われたささやかな価値観は無力である・・・・。長い歴史と住人同士のきずなで醸成されてきた町をはぎ取って造る「21世紀の都市」とは、どんな「まち」になるのだろうか。そんなことを思いながら陰影のない街を歩いた。
Labels: まちづくり
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